書きおろし・第3回 似ている犬の巻 [犬ばか歳時記]
書きおろし・第3回 似ている犬の巻
犬ばかというものは、自分ちの犬がどんなにアホでも、泳げなくても、毛がぼっさぼさでも、梅雨どきで臭くなっていても、世界一かわいいナアと思っているものであります。
と同時に、自分ちの犬に似た犬にさえも、並々ならぬ愛情を感じてしまうものですね。
わたくしも、ご多聞にもれず、「チルー似の犬」が通りすがるたび、はたまた、ブラウン管にちらっと写るたび、はたまた、新聞の小さな記事の端のほうに、チルー似の犬が写っているたびに、テンションが上がるのであります。
チルーみたいな、白い日本犬の雑種は、田舎へ行けばいくらでもうろうろしているものですから、わたしの家族も、「今日めっちゃチルー似の犬がひとりで歩いてるから、チルー!って呼んだけどチルーでなかったよ」的なことをよく言います。
チルーの特徴はまつげまで白いところですが、遠くから見たらそんなのはわからないですから、チルーが脱走したのではないか、と思うわけです。
それでは今までに一番驚いた「特選:チルー似の犬」をご紹介いたしましょう。
その犬とは、沖縄本島で出会いました。
「チルー」という名も沖縄語なので、何かの縁かもしれません。
勝連グスクで我々を頂上まで案内し、また見送ってくれたかしこい犬です。
沖縄本島の勝連グスクの跡。「グスク」とはお城のことです。琉球時代のお城の跡で、上に登ると海が見渡せます。
ひとっこひとり居ないグスクに、たった一匹遊んでいた白い犬。我々を頂上へと案内してくれました。
あまりにチルーに似ているので、沖縄へ一緒にこられなかったチルーの生き霊かと思ったほどです。よく見ると足がチルーより短い。
帰りも下までお見送りしてくれました。
さて、最後に本物のチルーの写真です。
いやー 本当によく似ています。
世の中には自分に似た人が3人いるといいますけれど、犬にもあるのかもしれませんね。