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Vol.4 ~犬の好きな、匂いと味~ [犬ばか歳時記]

犬の匂い・自分の匂い

 唐突ですが、自分が動物くさいとき、ありますよね? たとえば、前の晩にお酒を飲み過ぎて、風呂に入らずに眠ってしまい翌朝起きたときや、何かに没頭して徹夜してしまったとき。もしくは、異常に興奮して、のどが渇いてしかたがなくて、ただの水が本当にうまいとき。こういうとき、ふと自分の匂いを嗅いでみると、飼っている犬に近い、動物くさい匂いがする。ちょっとワクワクする匂いです。犬もいつもより熱心に私の匂いを嗅ぎます。


 動物くささって、すえた匂いというのとはまた違って、くさいが嗅いでいたい、懐かしさのこみ上げてくる匂い。とくに犬の耳の中は、そこからタイムスリップできるぐらい、すてきな匂いです。うちの犬、紀州犬雑種のチルーは、雨の日になると、ほのかに納豆の匂いがし(風呂ぎらいだから)、口の中が金魚くさいときもある(魚の頭を食べるから)。そういう匂いでも、自分の犬ともなるとぜんぜん平気。つまるところ愛だな、愛。

       

                                            

 犬のほうも、人の体の中で、脇の下や股間など「匂いの強いところ」を嗅ぎたがる。嗅いだあとに、「くせっ」という感じで鼻を鳴らされるとちょっとヘコみますが……。チルーは人工的な匂いが嫌いで、香水や虫よけスプレーのたぐいは嫌がるので、極力つけないようにしていますが、オリジンズのジンジャーの香りのボディオイルだけはたいへんお気に入りらしく、私がつけていると体をこすりつけてきます。一般的に、エッセンシャルオイルを薄めたやつは、犬にも心地よい匂いのようです。


 よく晴れた日には、犬の背中がお日様の匂いになります。イコール、干した布団の懐かしい匂い。犬はどんなに猛暑の日でも、かならず体を直射日光に当てるから、晩になっても背中にはお日様の匂いが残っている。犬枕で寝たら最高だなぁと思い、まるまって眠っている犬の上に自分の頭をのせて実行してみましたが、犬の呼吸はめちゃくちゃ速いので、お腹がふくらんだりへこんだり忙しくて、意外と枕には向いていませんでした。

 

犬の味覚
 
 犬は散歩中にほかの犬に会うと、まず尻の匂いを嗅ぎあいます。尻の穴を嗅ぎあうのが初対面の挨拶なんて、人間からしたら「何もそこまで直球でなくても」と思いますけれど、その匂いで個性や好みがすぐに判明するのだから話が早い。

チルーの場合は、ご近所の雑種のオス犬、「茶々」と「キューちゃん」が大好きですが、どっちも淡泊な性質で、チルーのほうがしつこい。しかしたまに遠出して堤防のほうに出かけると、知らないオス犬が一匹でひょっこりやってきて、挨拶していると思ったら上に乗られそうになって間一髪、なんてこともあります。こういうとき、メス犬の飼い主というのは必死です。


 散歩中のチルーは、ほかの犬がしていったオシッコやウンコの跡を、執拗に嗅ぎます。いったいどれだけの情報がオシッコに含まれているのか。「僕はポチ。ここがなわばりです」といった自己紹介のほかにも、「健康」とか「糖尿気味」とか、「いま、恋してます」とか「朝ごはんは米とみそ汁だった」とか、そういうことまで分かるのか、とにかくしつこく嗅ぐうえ、舐めることさえあります。たとえ大事な情報の収集とはいえ、他犬のオシッコを舐めるのはどうかと思う。人間が食べているものを、「くれー、くれー」と催促しておいしそうに食べる、その味覚と、オシッコを舐める味覚と、犬の中でどう両立しているのか、謎です。しかも、そういうものを舐めたその舌で、私の顔を舐めようとするのだから……嫌です。

                                                  
 さて、今回の写真は、私が出会った「つながれていない雑種犬2匹」をご紹介します。一匹は、京都・大原の駐車場に寝ていた、きっと呼び名は「くま」であろう、ふさふさの毛をした雑種犬。この駐車場は無人で、お金を木箱に入れるというアバウトなシステムでしたが、「くま」(仮)のコワモテのおかげで見事に秩序が保たれていました。

                                                                                                                                                                                           
 もう一匹は、大阪の神社にいた茶色い雑種。ナント首輪には、小判の形をした金色の根付がぶらさがっていました。きっと金運があがるお守りでしょう。信心深いおばあさんが飼っているのか、つながれていなくても、とても大人しくて、他人には甘えず、つかず離れず。こういうタイプの犬たちに、私はぐっときてしまいます。

(2003年『S.P.Splendid!』10月号掲載)

 


2006-01-26 19:55  nice!(1)  トラックバック(1) 

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